ごくごく小さな事業を除くあらゆる事業において、
CEOの仕事は、一人の仕事として組み立てることは
不可能だということである。それは、共同して行動する数人からなる
チームの仕事として組み立てる必要がある。
ピーター・ドラッカー
ありがとうございます。
私はシリコンバレーに出張に行った時にこんな話を聞きました。
業界全体が不振の中、一番最初に業績不振から脱した会社がありました。
歴代の社長は6代にわたって組織を変えようと改革に取り組みましたが、
すべて失敗に終わりました。7代目の社長は経営チームのメンバーに
「どんな成果をあげるべきか」を尋ねました。
経営チームのメンバーは、これまで自分たちの考えを
主張する機会がなかっただけでそれぞれしっかりとした考えを持っていました。
経営チームは「自分たちがあげるべき成果は、顧客単価を増やすことだ」と答えました。
社長は経営チームのメンバーに、「それをやっているお店はどこだ?」と尋ねました。
確認してみると、98店舗あるうち17店舗が、既にそれを行っていました。
社長は、その17店舗の店長に「他の店長にそれを教えてあげてほしい」
と指示を出しました。あげるべき成果をあげている店長が行っていることを、
他の店長が共有し、すべての店長がそれを実行するようにしました。
こうしてこの会社は、業界全体が業績不振に悩む中にあって、
業績不振から脱したのでした。この成功は、「新しいことを行ったこと」
によるものではなく、「行うべきことを行ったこと」によるものです。
歴代の社長は、何代にもわたって、経営チームのメンバーがしっかりとした考えを
持っていると思っていなかったために、「行うべきこと」を見つけられなかったのです。
経営チームのメンバーは、しっかりとした考えを持っているものです。
経営チームのメンバーに「どんな成果をあげるべきか」を尋ね、
うまくいっていることを見つけ出し、それを組織で共有していきましょう。
経営人材の育成とは、「彼らに知識を詰め込むこと」ではなく、
「彼らの成功を活かすこと」なのです。現実を直視しながらも、
目の前のことにとらわれず、その向こうにあるものを見ていきましょう。
彼らの今の能力をるのではなく、彼らの人間を見るのです。彼らの未来を見るのです。
大事なのは次の世代です。ありのままの彼らの質を高めることに貢献することこそ、
われわれが引き受けるべき、われわれの役目ではないでしょうか。
最後に、ドラッカーの言葉を紹介して終わります。
才能ではない。真摯さである。
~第7章 経営人材はこう育つ~より
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