未来において何かを起こすということは、新しい事業を作り出すということである。
新しい経済、新しい技術、新しい社会についてのビジョンを、
事業として実現するということである。
ピーター・ドラッカー
行動を起こさないで機会を失うことを恐れよ。
「失敗を恐れるより行動を起こさないで機会を失うことを恐れよ。」
シリコンバレーのそんな価値観を教えてくれるのは
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
New Energy and Industrial Technology Development Organization
(以降NEDO)シリコンバレー事務所の亀山所長だ。
1980年に誕生したNEDOは、エネルギー・地球環境問題の解決と
産業技術力の強化をミッションとする、経済産業行政の一翼を担う
日本最大級の公的研究開発マネジメント機関である。年間約1,400億円の予算を持ち、
約1000名の職員を擁する。(2017年度) 実用に至っていない優れた技術は多い。
それらは実用化までの開発に膨大な時間と多額の予算を必要とするため
民間企業では手に負えないものも少なくない。言わば眠れる宝の原石だ。
そうした中、NEDOはエネルギー、ロボット、IoT、材料といった幅広い分野で、
社会的インパクトが高い技術にフォーカスし、産学官連携の触媒的な役割を担い、
研究開発を行う組織を経済的に支援するとともに開発プロジェクトの
マネジメントを行っている。
亀山所長にNEDOの主な活動とシリコンバレーの動向について伺った。
今注目されている電気自動車を普及させるためには長距離走行の実現が不可欠だ。
その鍵を握るのは充電に関する問題の解決である。
NEDO と日本企業の取組によって都市間をつなぐ幹線道路沿いで
電気自動車の急速充電ステーションの整備が進んでいる。
さらにサンディエゴでは現地の大手電力会社と連携し、
再生可能エネルギーの普及に伴う電力需要の変動に対応するため、
日本の技術を活用した大型蓄電池の導入に取り組んでいる。
「必ずしも技術そのものに価値があるとは限らない。技術は何らかの形で活用され、
社会に具体的なメリットがもたらされてはじめて価値が生まれる。
いかなる組織も手段が目的になってしまう危険性を有している。
我々も“どうすれば日本の国益を増進させ、日本の経済の発展につながるか“
という目的を常に意識しながら仕事にあたっている。」亀山所長は語る。
日本は技術からスタートして「モノ作り」を考える傾向が強い。
それに対してシリコンバレーでは、人々が今何を求めているのか、
何を提供したらよりよい生活環境になるのかといった発想で「コトづくり」を追求する。
技術を組み合わせてユーザーのニーズを満たすビジネスを創出することが重要であり、
仮に技術が足りなければ外から持ってくればよいという考え方だ。
たとえば、アマゾンは一見、ネットでモノを販売しているだけのように
見えるかもしれないが、お客様のニーズを集め、そのニーズに応えるため得た収益を
次のビジネスに投資して次から次へと新しい価値を生み出している。
現状を維持しようとするだけの企業は淘汰されていくことは間違いない。
ドラッカーはこう言っている。
未来において何かを起こすということは、新しい事業を作り出すということである。
新しい経済、新しい技術、新しい社会についてのビジョンを、
事業として実現するということである。
ピーター・ドラッカー
新しい社会を作るのはビジョンを描く意思と機会を開拓する努力だ。
今日本に求められているのは、新しい社会に向けたビジョンを描き、
失敗を恐れず新しい事業を作り出していくことかもしれない。