ジッパーを発明した者以外で、衣類をとめるのにボタンやホックでは不都合だなどと考えた者が何人いたか。あるいは、ボールペンを発明した者以外に、あの19世紀の発明たる万年筆に欠陥があり、その欠陥が何であるかを考えた者が何人いたか。あとになって答えることは容易である。だが事前に答えることはできるだろうか。
ピーター・ドラッカー 『イノベーションと企業家精神』
変化を機会として活用する
今あるニーズに応えること、未来も生き続けるためには新しいニーズを創り出すことが必須であることは明らかです。どのような組織であっても新しいお客さんをつくり続けることによって、将来にわたり成長し、存在し続けることができます。
新しいお客さんをつくること言うことは、新しいニーズを創り出すことに他なりません。どんなコンサルタントであっても「答え」はなく、持ち合わせるのは「アイデア」だけです。わたしも、クライアントの事業を発展させる「絶対的正解」を持ちません。わたしが持ち、わたしが提供しているのは、事業の発展を導き出す「方法」です。
新しいお客さんをつくることは、マーケティングとイノベーションの2つによってなされます。「今あるニーズに応えていくことがマーケティング」、「新しいニーズを創り出すことがイノベーション」です。新しいニーズを創り出すにあたってアイデアはなくてはなりませんが、アイデアのみではあまりにもリスクが大き過ぎます。
そこで、ドラッカー教授は、変化を機会として活用し、自分たちが提供しているものを進化させる必要性を主張されています。ジッパーは、海軍で開発されたものです。そのジッパーが衣類に使われるようになったのは、かなりそのあとです。アパレル業は、衣類にジッパーを取り入れたことで新しいニーズを創り出し、いままでにない、多くのお客さんをつくりました。事業を発展させるヒントは、自分の業種の外にたくさんあるかもしれませんね。