肉体労働者が何をすべきかを問題にすることはない。
問題にするのは、いかに仕事を行うべきかだけである。
このことは、テイラーの科学的管理法、
フォードの組み立てライン、デミングのTQCについてもいえた。
ピーター・ドラッカー『明日を支配するもの』
PDCA、御社はどちらですか?
PDCAとは、1945年以降、モノづくりの生産性を高めるためにウォルター・シューハート氏、エドワーズ・デミング氏が提唱した品質管理方法の一つです。ご存じの通り、この考え方はISO9001などの品質管理の国際規格に反映されています。1980年代後半、エドワーズ・デミング氏はPDCAを再考し、CheckをStudyに置き換え"PDSA"と改正しましたが、多くの企業はPDCAに重きを置いています。
1人でできるちから仕事は10人で行えば、その生産性は約10倍になります。これが考える仕事となるとそうはいきません。たとえスキルの高い人が集まったとしても人間は考えがぶつかることもあります。1人で考えるより10人で考える方がいいとは一概に言い切れないのです。
肉体労働という言葉を最初に使ったのは誰かは不明ですが、知識労働という言葉をはじめて使ったのは、ドラッカー教授です。前者は、行うことが既に明らかであるため、からだを動かせば完了する類の仕事です。ここに、「チラシを1000枚配布する」という仕事があるとします。その仕事は"新しいお客様を増やしたい"という目的は明らかです。したがって、"どう配布すればいいか"という方法に関心が注がれます。このように、肉体労動は「いかに行うか」といった方法からスタートします。
それに対して、後者は、目的を定めてはじめて開始できる類の仕事です。ここに、「チラシをつくる」という仕事があるとします。その仕事は、"何のために"、"誰に対して"、"何を"、といったことが明らかでなければ、チラシをつくり始めることはできません。したがって、どんな成果をあげるためのものなのか"ということから考える必要があります。このように、知識労動は、「何をすべきか」といった目的からスタートします。
ドラッカー教授が言われている「デミング」とは、PDCAの発案者であるエドワーズ・デミング氏のことです。「TQC」とは、Total Quality Controlのことで品質管理法の手順である、PDCAを指します。PDCAは「いかに行うか」といった方法を手順にしたもので、「何をすべきか」という目的から考える類の仕事に適しません。
確実に言えることは、PDCAは、品質管理のサイクルであって、マネジメントのサイクルではありません。「PDCAが正しいか正しくないか」という議論は意味がありません。しかし、「PDCAが御社にとって効果的か効果的でないか」は、御社の繁栄と衰退を左右するため、極めて重要な意味を持ちます。「いかに行うか」といった方法からスタートする類の仕事であれば、PDCAをお勧めします。それは御社にとってPDCAが効果的だからです。「何をすべきか」といった目的から考える類の仕事であれば、PDCAはやめてください。それは御社にとってPDCAは効果的ではないからです。御社はどちらですか?。