組織は、それ自身の為に存在するのではない。生き物のように、自らの生存そのものを至上の目的とすることはできない。組織の目的は、社会に対する貢献である。
ピーター・ドラッカー
BOSS 月8号 ドラッカーに学ぶこれからの経営 山下 淳一郎
こんにちは。山下です。今回は、「だから、わが社は発展した!」というテーマでお話させて頂きます。先日、コーヒーを提供している大手のコーヒーチェーンが、今後アルコールを提供していくことが話題になりましたね。そんなニュースを見て新しい業態を創り出していく企業の強いエネルギーを感じました。伸び悩む企業は、創業の精神を忘れて永続的に事業を守っています。それに対して、伸びていく企業は創業の精神を守りながらも定期的に新しい業態を生み出しています。
カフェと言えば、日本にその文化をつくったのは、ご存じの通り、ドトールコーヒーです。ドトールコーヒーは、1926年にコーヒー豆の卸売として創業されました。当時は八畳一間の事務所で、従業員はたった2名。喫茶店にコーヒー豆の営業に訪問しても「商売の邪魔だ!」と怒鳴られ門前払いの日々だったそうです。創業当時は来る日も来る日も苦境の連続であったことは、余人が語れるものではありません。1964年、ドトールコーヒーはコーヒーショップを開業し、事業を拡大していきました。創業者である鳥羽社長は相当悩まれたそうです。それもそのはずです。コーヒーショップの開業は、コーヒー豆を納めていた喫茶店と競合関係になってしまうわけですから、事業の拡大というよりも、日銭を得ることための苦肉の策であったそうです。今でこそ、カフェと言えば華やかなイメージですが、その時代の喫茶店といえば、テーブルがゲーム台であったり、よもや一歩違う業界にまで発展しかけたように、健康的なイメージを持たない分野でした。「老若男女問わず、健康的な空間を提供しよう」当時では想像すらできない業界の改革に挑まれたのです。現在、ドトールコーヒーは従業員1000名を超え、店舗数は1500ヵ所以上、年商は約700億を超える大企業に発展しています。
1996年に日本に進出を果たしたスターバックスが注目されはじめ、ドトールコーヒーは厳しい競争を余儀なくされたかに思われました。ところが、ドトールコーヒーはそれをチャンスととらえ、エクセルシオールという新しい業態をつくり、事業をさらに伸ばしていきました。創業者である鳥羽名誉会長は、次のように語られています。"織田信長が軍旗に掲げたものは「天下布武」、武田信玄は「風林火山」。いずれも戦いの発想だ。徳川家康が掲げた「世のため人のため」という使命が正しかったからこそ、多くの人々の賛同を得られた。最初に正しい願いやポリシーを持ったからこそ、半世紀以上にわたりコーヒー業界に身を置くことができた。だから、わが社は発展した。