事業部を担当する者はトップマネジメントの仕事を行うには忙しすぎる。
そのためトップマネジメントとしての貢献は何らできない。
トップマネジメントの責任を担う者は、
トップマネジメントの仕事ではない責任を担わなくてもよいようにする必要がある。
ピーター・ドラッカー
成功している企業のトップの仕事
私は、現在、さまざまな企業の経営チームのコンサルティングをしている。ピーター・ドラッカーは、すでに50年以上も前にこう言っている。草創期は、企業は一人の人間の延長である。しかし、一人のトップマネジメントからトップマネジメントチームへの移行がなければ、企業は成長どころか存続もできない。成功している企業のトップの仕事は、チームで行われている。このたび、「ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方」を刊行したのは、トップマネジメントはチームで行う仕事だということを知ってほしかったからだ。ここでは、トップマネジメントチームをつくる具体的なポイントをお伝えする。
経営チームとは、部署名ではないし、組織上公式なものでもない。また会社の規模によって、経営チームの形は違う。一口に「会社」と言ってもその規模はさまざまだ。一般的に「中小企業」「中堅企業」「大企業」などと表現されている。私たちは普段、それらの明確な区分を気にしないで使っている。会社の規模によって経営チームの課題が異なるだけです。それでは、会社の規模によって、それぞれどのように課題が異なるのだろうか。
中小企業は、顔を突き合わせながら事業にあたることができる。形式的な手続きもなく、力を合わせて仕事に取り組んでいくことができる。この場合、経営者は社長1人、その下はほぼ同列の文鎮型の組織だ。社長以外に取締役という役職を持つ人がいる会社もありますが、ほとんどが「取締役兼○○部長」という肩書きで現場の仕事に専念している。中小企業の経営チームは、社長のほか、経営者としての役職を持たない営業部長や経理課長が経営チームのメンバーになる。中小企業の経営チームで押さえておくことは2つだ。1つは、自分でやった方が早いという短気を起こさず社員を育てていくこと。2つ目は、社長は自分が得意としない仕事は絶対にやらないことだ。自分が得意としない仕事は、それを得意とする人に任せるようにしてほしい。たとえ役職のない社員であっても重要な仕事を任せれば、自分は重要な仕事を任されていると思い、責任をもって仕事にあたってくれるはずだ。自分1人ですべてをしないようにしよう。