マネジメント3つの役割
第一は、それぞれの組織に特有の社会的機能をまっとうすることである。
事業を通じて社会に貢献することである。新聞社であればよい紙面作りに努め、
八百屋であれば安くて新鮮な野菜を売ることである。
社会に貢献する気のない組織はギャング団ぐらいのものである。
他の組織はすべて、社会に貢献するからこそ、存在を許され、場所を占有し、
人を雇用し指示することを許されている。
第二は、それぞれの組織にかかわりを持つ人たちが
生き生きと生産的に働けるようにすることである。
社会的な存在としての人間は、自らの能力を存分に発揮し、
自己実現し、社会に貢献することを求める。
特にこれからは、生き生きと生産的に働くことのできない組織からは、
人が去っていくという時代になる。
第三は、世の中に悪い影響を与えないことである。
自らの存在と活動のゆえに世の中に与えるインパクトをなくすことである
。少なくとも最小限にとどめることである。
物を作っているのであれば、どうしても音が出るであろう。
だが、音量は極力、小さくしなければならない。
ドラッカーはそれらの迷惑は極力、小さくしなければならないという。
さらに一歩進み、組織の強みを用いて、社会の問題を解決することだという。
できれば事業化することだ。電力会社、自動車メーカー、コンビニ、病院、
いずれも社会のニーズを満たすことが事業となっている。
このことはあらゆる事業についていえる。
ドラッカーのいう組織の社会的責任とはこういうことである。
企業の社会的責任という名の、何か特別の責任が
存在するわけではないと強くいう。社会の特定の人、層、機関に
特別の責任を与えることは、政治学的に間違いである。
ヨーロッパでは、はるか昔に葬られた考えである。
近代企業の生まれるずっと前、パスカルが指摘したとおりである。
特別の責任を課すならば、特別の権限を与えることになる。
権限に責任が伴うように、責任には権限が伴う。
マネジメントにとって利益とは、
これら三つの役割を明日も果たしていくための必要条件である。
同時に仕事ぶりを測る尺度である。目的ではない。
必要条件のほうが、目的よりもきつい。尺度もまた目的よりもきつい。
入門ピーター・ドラッカー-8つの顔 『週刊東洋経済』
インタビュー上田惇生先生
詳しくは、こちらです。
著 者 : 山下 淳一郎
この世にあって何がしかの責任を担う者であるならば、
ドラッカーとは、いま読むべきものである。明日読むべきものである。
10年後、50年後、100年後にも読むべきものである。