
会社の将来を担う経営集団
皆さんの会社では、取締役の皆さんが
どんな仕事をしているでしょうか?
形式的な役員会での発言、資料の承認、数値の報告
――そうした「それらしいこと」をやってはいるものの、
こんな課題を抱えていませんか?
・取締役が実質的には事業部長としてしか動いていない。
・役員同士で会社の未来について本気で語る機会がない。
・取締役が「部門長」としての役割が主で企業全体の視点に立てていない。
・社長と一部の役員しか会社の将来についての決断をしていない。
経産省の調査では、上場企業の役員の68%が
「自部門に集中しており、全社視点で
議論に時間が取れていない」と回答しています。
また、約58%の企業で「役員会の実効性に課題がある」と
指摘されており、その主因の一つが
「役員の本務が事業部の責任者であること」
と明記されています。
つまり、「取締役=全社視点の経営者」として
機能していない現実が、多くの上場企業で
常態化しているのです。
そのままにしておくと、どうなるでしょうか?
この状態を放置しておくと、どんな未来が待っているのでしょうか。
それは、やがて企業の成長は止まります。
成長が止まるどころか、変化に対応できず、
やがて市場から退場していく可能性すらあります。なぜなら――
1.戦略が現場の都合で歪められる。
2.「全社最適」の視点が欠落し、部門最適が蔓延する。
3.社長と一部役員だけが意思決定を担い、疲弊・孤立する。
4.後継者育成が進まず、経営陣の交代で事業が一気に弱体化する。
これが、目に見えないリスクとして、
じわじわと企業の体力を削っていきます。
ある調査では、経営者が孤立していると
感じる最大の理由は、
「役員が社長と同じ視点で経営を見ていないこと」
だと答えた割合が71%にも上っています。
「取締役が取締役としての仕事をしていない」。
これは個人の問題ではなく、制度設計の問題です。
ではどうすればいいのでしょうか?
ドラッカーさんはこう言っています。
草創期、企業は一人の人間の延長である。
だが、一人のトップマネジメントから、
トップマネジメントチームへの移行がなければ、
企業は成長どころか存続すらできない」
ピーター・ドラッカー
つまり、企業が成長し続けるためには、
「経営」を一人ではなくチームで担う必要が
あるということです。
さらにこうも述べています。
成功している企業のトップの仕事はチームで行われている。
ピーター・ドラッカー
取締役が部門の責任者であるだけでは、
経営の中枢とは言えません。本来の取締役の仕事は、
「全社の未来を創造すること」です。
ドラッカーさんが繰り返し強調したのは、
取締役は“機能”であって“地位”ではないということです。
機能を果たしていなければ、どんなに肩書きが立派でも、
それは経営チームではありません。
ホンダの創業期のエピソードをご紹介しましょう。
本田宗一郎さんが技術を、藤沢武夫さんが
マネジメントを担っていた時代――
この“名コンビ”の話はよく知られていますが、
見逃されがちな重要な改革がありました。
当時のホンダでは、すべての取締役が
事業部の責任者を兼任していたそうです。
藤沢さんはそこに強い危機感を持ち、
取締役から事業部責任を解き、取締役専任制へと踏み切りました。
結果どうなったか?専任となった取締役たちから、
驚きの声が上がります。「改めて考えてみると、
これまで取締役としての仕事を何もしていなかった…」
この一言にすべてが表れています。人はどうしても、
自分の本務――つまり、目の前の成果責任の方に引きずられます。
兼任であればあるほど、取締役としての仕事は
「後回し」になってしまうのです。
藤沢武夫さんのこの改革は、ホンダに
「トップマネジメントチーム」という概念を根づかせました。
本田宗一郎さんと藤沢武夫さんが亡くなった後、
ホンダがさらなる成長を遂げられたのは、
経営をチームで担う土台ができていたからです。
それでは今日のアクションポイントです。3つお伝えします。
それでは、今の経営陣を「チーム」へと進化させるためには、
どんな一歩を踏み出せばいいのでしょうか。
1.取締役の役割を再定義する
「部門責任者としての役割」と「取締役としての役割」を
明確に分けて言語化しましょう。たとえば、「全社戦略の立案」
「社長の意思決定の補完」「後継者育成への関与」などです。
2.取締役の専任化を検討する
難しいテーマですが、「経営と現場」を両立
しようとすること自体が矛盾である場合も多いのです。
兼任の限界を見極め、一部の役員だけでも
専任に切り替える勇気を持ちましょう。
3.意思決定の透明性とチームとしての合意形成
社長の独断に見えないように、役員がともに決め、
責任を共有するプロセスを丁寧に作る。
多くの上場企業で「取締役」が「部門責任者」としてしか
機能していません。この状態では、企業の成長は頭打ちになります
。あなたが今、役員として担っている仕事は、
本当に“取締役の仕事”になっているでしょうか。
日々のオペレーションの中に埋もれて、
「経営」という名の未来づくりから遠ざかっていないでしょうか。
経営は、一人ではなくチームで行うもの。
次回も、そんな視点から経営を深掘りしていきます。
『成功している企業のトップの仕事はチームで行われている。』です。
ぜひ、トップマネジメントチームをつくってください。
詳しくは、こちらでお読みになれます
ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方
著 者 : ドラッカー専門の経営チームコンサルタント 山下 淳一郎
出版社 : 同友館 1,600円(税別)
トップマネジメントがチームとして機能するには、いくつかの厳しい条件を満たさなければならない。
チームはシンプルではない。仲のよさで機能させることはできない。好き嫌いは問題ではない。
人間関係に関わりなく、トップマネジメントはチームとして機能しなければならない。
ピーター・ドラッカー
経営チームをつくりたいとお考えの社長様へ

いかなる組織といえども、その業績はトップマネジメントにかかっている。
ピーター・ドラッカー
今以上に事業を伸ばしていくためには、経営チームが不可欠です。
さらなる発展のために、経営チームをつくりましょう。