なされるべきことを考えることが成功の秘訣である。何をしたいかではないことに留意してほしい。これを考えないならば、いかに有能であろうと成果をあげることはできない。
ピーター・ドラッカー
BOSS 月9号 ドラッカーに学ぶこれからの経営 山下 淳一郎
名刺に取締役と書かれながらも、経理出身の人は相変わらず電卓を叩き、営業出身の人はこれまでと同じように営業に走り回っている。取締役に昇格したのにも関わらず、取締役としての仕事にあたらず取締役に昇格する前とまったく同じ仕事をしている。そんな取締役の姿に不満を抱く社長は少なくなりません。それは一人の取締役の問題ではなく、会社の将来に関わる会社の問題です。なぜなら、取締役が取締役としての仕事に当たらない状況を許し続けてしまえば、会社の発展する力は次第に失われ、やがて事業は停滞してしまうからです。
取締役に昇格した人が、取締役に昇格したにも関わらず取締役としての仕事にあたらないのはなぜか。仕事の意欲を失ってしまったからか。それとも取締役としての自覚がないためなのか。けっしてそうではありません。取締役に昇格した本人も、取締役としてどのような仕事をどのように仕事にあたっていいかわからないのです。取締役の多くが「取締役兼□□本部長」といったように、一つの部門の責任者を兼任しています。結果として、「□□本部長」という一つの部門の責任者としての仕事のみに専念してしまうのです。では、取締役に取締役の仕事をしてもらうために具体的にどうすればいいのでしょうか。話が概念的にならないためにも事例をご紹介します。
社長は技術、自分はマネジメント。ホンダはそのように役割を明確にして経営を進めていったことはご存知の通りです。当時副社長の藤沢武夫さんは、会社の将来を見据えて経営者の育成を自分の責任と課し、次のような手を打たれました。当時の取締役の兼任をすべて解き、すべて取締役を専任にしました。そして、「取締役の仕事は何か?」について考えるミーティングだけを取締役の仕事としたそうです。四ヶ月間その仕事しかさせなかったそうです。当時の取締役の方々から、「改めて考えてみると取締役としての仕事を何もしていなかった」という声が上がったそうです。こうして、当時の取締役の方々は、取締役として自分が担うべき責任を見い出し、取締役として自分があたるべき仕事を定めていったのです。経営者の最も重要な仕事は・・・(月刊BOSS8月号より一部抜粋)