トップマネジメントチームのメンバーは、自らの担当分野では
自ら意思決定を行わなければならない。しかし、ある種の意思決定は
チームに保留する必要がある。
巨額の投資や人事など重要なことについては決定する前に、
トップマネジメントのチーム内で検討しなければならない。
ピーター・ドラッカー
チーム内で話し合う
適切な決定を導き出すために
アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスがの言葉はあなたも知っているだろう。
「かつてはドッグイヤーと言われたが、いまやマウスイヤーだ。
1カ月の意思決定の遅れは7年に匹敵する犬が人間より
はるかに速いスピードで成長することは周知のとおりだ。
ドッグイヤーとは、時代が変わりゆく速さを表現するものとして生まれた言葉だ。
マウスイヤーはこれまでにも増して、さらに速いスピードで社会が
様変わりしていく姿を表現するものとしてベゾスが使った造語である。
意思決定を間違ってしまえば、何十年分の損になるか計り知れない。
しかし、意思決定のスピードを重視するあまり、正確性を損ねるのはさらに危険だ。
ベゾスは、スピードが大事とは言ったが話し合わなくていいとは言っていない。
適切な意思決定を導き出すために、話し合いは欠かせないのだ。
ここで言う話し合いとは、決定する前に検討するということだ。
ドラッカーはこう言っている。
トップマネジメントチームのメンバーは、自らの担当分野では
自ら意思決定を行わなければならない。しかし、ある種の意思決定は
チームに保留する必要がある。巨額の投資や人事など重要なことについては
決定する前に、トップマネジメントのチーム内で検討しなければならない。
巨額の投資や人事の決定は話し合う
経営チームは一人ひとりが、各担当分野の最終意思決定者であることは
この連載で既に伝えたとおりだ。
しかし、各担当分野の最終意思決定者=勝手に決めていい」ということではない。
組織のひとりとして、チームの一員として仕事をしている以上、
話し合わなければ決められないことがある。
それは、巨額の投資や人事についてである。
ある企業でこんなことがあった。入社日も年齢も成績も
ほぼ同じである社員AさんとBさんがいた。嘱望されていた2人だったが、
ある日Aさんだけが昇格した。昇格できなかったBさんは、
「自分はよほど期待されていないのだ」と勘違いを起こし、
仕事に対する意欲が下がっていった。
Bさんの上司にAさんを昇格させるという情報が行っていなかったため、
Aさんの昇格に伴ってBさんを昇格させるべきかどうかを
検討する機会を持たなかったのだ。
事前に確認し、話し合いの場さえあれば、それが必要なことは分かったことだ。
8カ月後、Bさんはその会社を辞めてしまった。
上の意思疎通の無さの結果、大事な人材を失ってしまった。
話し合いの場さえあれば、起こらないことだった。
このように、会社にとって重要なことは話し合って決めなければならない。
事業を成長させ、組織を繁栄させていくためには、
充分な話し合いが必須なのだ。