聞け、話すな、である。
ピーター・ドラッカー
部下の声に耳を傾ける
社長の仕事は、「部下を動かすために命令をすること」ではなく、
「命令なくても部下が動けるようにすること」である。
社長の役目は、命令を下すことではなく、合意の形成者となることだ。
では、社長は具体的に何をすればいいのか。
ドラッカーはこう言っている。
聞け、話すな、である。
ピーター・ドラッカー
事業の停滞を生む最大の原因は、社長の圧制と取締役の沈黙である。
社長の一方的な命令は取締役の思考を麻痺させる。
しかし、共通目的に立った議論は取締役のエネルギーを解放する。
取締役は、社長の強い命令に従わされて無難なことをするか、
社長の善き意思に導かれて偉大はことをするかのどちらかだ。
社長は話し合う前から話し合いと遠いところにいる。
話し合う前から社長は自分の結論をもっているからだ。
一度、頭の主(ぬし)となった考えは変えづらい。
実際、自分の考えと違う考えが部下から出てきた場合、
社長は「そうではない、よく聞け」
と言わんばかりに部下に説得をはじめる。
話し合いは一瞬にして社長の独演会となる。
立場、役職、仕事、責任が違えば見えるものが違う。
物事には必ず死角がある。
自分の肉眼で自分の背中を見ることができないように、
一人の人間が認識できる範囲にはおのずと限界がある。
生身の人間である以上、思い込みや間違えもある。
実際、部下の話をじっくり聞いてみると、
「自分はそこを気にしていたのか」ということに気付けたり、
自分が見落としていたものを見つけることができる。
部下も理に合っていないことを言うはずがない。
そこには社長の視界に映らないものが隠れているものだ。
「なるほど、そういう背景があるとは知らなかった」と理解が深まり、
「わかった、それならこうしよう」と、より適切な考えが生まれ、
自分の結論が変わることもある。
ひとたび意思決定を間違えてしまえば、
会社を思いも寄らない方向へ導いてしまう。
「部下はなぜそう考えるのか」ということについて
知っておいて損はない。自分に見えていないものを
残したまま何かを決定してしまうのと、
自分に見えていないものを新たに知ったうえで決定するのとでは、
その後の結果は大きく変わる。
後者の方がより精度の高い決定ができるのは当然だ。
社長は「部下に見えていて自分に見えていないもの」を
知ることが必要であり、そのためには自分と違う考えに
耳を傾ける姿勢が求められる。
だから、「聞け、話すな」なのだ。
『ドラッカー5つの質問』より
詳しくは、こちらでお読みになれます
ドラッカー5つの質問 山下 淳一郎
成功を収めている企業は、「われわれの事業は何か」を問い、
その問いに対する答えを考え、明確にすることによって
成功がもたらされている。
ピーター・ドラッカー
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