ミッションをもつことは、激動の世の中はますます重要となる。
世界. がどう変わろうとも、人は、誇りあるものの
一員たることを必要とする。人生と仕事に意. 味を必要とする。
絆と信条の共有を必要とする。
ピーター・ドラッカー
2.3度にわたるドラッカーとの出逢い
振り返ってみれば、ドラッカーと私の出逢いは三度ありました。
一度目は幼少期の頃です。経営者である父の書斎に、
ドラッカーの本がズラッと並んでおり、
子供ながらに「ドラッカーという人はすごい人なんだろうなぁ」
という認識を持っていました。
二度目は大学を卒業し、外資系コンサルティング会社に
入社したばかりの二十二歳の時。上司から
ドラッカーの『経営者の条件』と『現代の経営』だけは
読むように言われ、寝る前に本を開いていたものの、
難解ゆえに三十秒で熟睡してしまう。
表面の文字を追いかけるだけで、ドラッカーの真意を
掴むことはできず挫折しました。
転機が訪れたのはそれから十五年後のこと。
勤務先のコンサルティング会社が買収され、
二か月ほど路頭に迷った時期があります。
当時インターネットが普及し始めていたこともあって、
IT系の会社に入社。二年後のある日突然、社長に呼ばれ、
「来年の四月から取締役だ」と言われて驚きました。
経営陣の一員である取締役の仕事は経営をすること。
ところが、経営とは何をすればよいのか全く分かりません。
その時、ふと思い出しました。「そうだ、ドラッカーだ」と。
そこからドラッカーの本を読み直すと、かつて理解できなかった
ドラッカーの言葉がスーッと心に入ってきたのです。
これが三度目の出逢いであり、真の出逢いとなりました。
「トップマネジメントは一人による仕事ではなく、
チームによる仕事である」この言葉を受けて
、私は社長に了解を取り、ドラッカーの教えをもとに
経営チームを編成し、リーダー役を務めました。
本で得た知識を実践し、試行錯誤を重ねるうちに
経営チームが機能していき、加えて時代の追い風もあり、
結果的に約20億円だった売り上げを3年間で
3倍近くに伸ばすことができたのです。
その後、IT系の上場企業の役員となり、
そこでも同じ手法を用いて成果を上げることができましたが、
次第に売り上げ至上主義のような社風と社内の派閥闘争に対して、
「何のために仕事をしているのか」という疑問を抱くようになりました。
この時、とりわけ胸に響いたのが次の言葉です。
「ミッションをもつことは、激動の世の中ではますます重要となる。
世界がどう変わろうとも、人は誇りあるものの一員たることを必要とする。」
何のために仕事をするのかという軸がなければ、
変化に右往左往して価値ある事業を提供することはできません。
経営陣は私を除いて皆優秀な人たちでしたが、
結局、売り上げのため、お金儲けのために働いていたから、
人間関係もギスギスして派閥が生まれ、
お客様に目を向けず内部の都合だけで
意思決定するようになってしまったのでしょう。
リーマン・ショックと相俟って、
業績は急降下を辿っていきました。規模の大小を問わず、
一つひとつの会社が価値ある目的を持ち、
一人ひとりの社員が仕事に価値を感じて働くことができれば、
社会全体はよくなっていくはず。
もしそこにお役に立てるのであれば、
自分自身も価値ある人生を送れるかもしれない。
コンサルタントと経営者という二つの経験を生かし、
外側から経営チームを一枚岩にするお手伝いをしよう。
そう思い立ち、会社を辞めて独立する道を選びました。
(原稿は出版社の編集者によるものです)
続く…
□ 1.ドラッカーの教えに基づき企業を発展へと導く
□ 2.3度にわたるドラッカーとの出逢い
□ 4.ドラッカー5つの質問
□ 5.人材育成の秘訣とリーダーの条件
□ 6.自分で自分を陳腐化させる
ドラッカー5つの質問 山下 淳一郎
成功を収めている企業は、「われわれの事業は何か」を問い、
その問いに対する答えを考え、明確にすることによって
成功がもたらされている。
ピーター・ドラッカー