確立した事業体として成功したかに思われたその時、
理解できない苦境に立つ。製品は一流、見通しも明るい。
しかし、事業は成長しない。原因は常に同じである。
トップマネジメントの欠落である。企業の成長が
トップ一人でマネジメントできる限界を超えた結果である。
ピーター・ドラッカー
3.経営チームの第一歩は主語を「われわれ」にすること
ドラッカーはこうに言っています。
「確立した事業体として成功したかに思われたその時、
理解できない苦境に立つ。製品は一流、見通しも明るい。
しかし、事業は成長しない。原因は常に同じ。
トップマネジメントの欠落である。企業の成長が
トップ一人でマネジメントできる限界を超えた結果である。
創業間もない頃は、社長一人ですべて仕切ること
が可能でしょう。ところが、事業が順調に成長していくと
お客様も増え、社員も増えていく。そうすると社長一人だけで
適切な意思決定や指示命令ができなくなり、
事業の成長は止まってしまう。
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏ですら、
「偉大なことは一人ではできない」という言葉を遺し、
実際に四人で経営していました。彼が担っていた仕事は、
新商品の開発と新商品の発表だけです。
本田技研工業も本田宗一郎氏が車を開発し、
藤沢武夫氏が会社経営を任されていました。
その藤沢武夫氏の言葉。「社長は得意なことに徹してもらって、
社長の苦手なことは社長に心配をかけないように、
みんなで分担するんだ」
メディアはトップ一人の功績かのように取り上げますが、
成功している会社には必ず社長を守る経営チームが
存在するのです。では、いかにしてトップと
ベクトルの揃った経営チームをつくるのか。
ドラッカーはまず「主語を〝われわれ〟にしよう」
と言っています。具体的には経営会議の場で
主語を「われわれ」にして話し合うということです。
なぜそうするかと言えば、取締役は一つの部署の責任者を
兼任している場合がほとんどでしょう。仮に取締役営業部長が
今年の売り上げ目標を達成できていないとすると、
「経営会議の場で偉そうなことは言えない」
という気持ちになるのが人間の心理です。
そうすると、「私の部署は」「今月の売り上げは」と、
取締役にもかかわらず、一営業部長という視野の中に
埋没した発言を繰り返してしまう。社長はどう思うか。
「取締役なのに自分の管轄部署のことしか考えてくれないのか。
結局、会社全体のことを考えているのは自分一人か」と。
これが経営チームをつくれない要因なのです。
だからこそ、経営会議の場で主語を「われわれ」にし、
一部署の責任者だということも取り払い、
会社全体のことを話し合うことがとても大切になります。
(原稿は出版社の編集者によるものです)
続く…
□ 1.ドラッカーの教えに基づき企業を発展へと導く
□ 2.3度にわたるドラッカーとの出逢い
□ 3.経営チームの第一歩は主語を「われわれ」にすること
☑ 4.ドラッカー5つの質問
□ 5.人材育成の秘訣とリーダーの条件
□ 6.自分で自分を陳腐化させる
ドラッカー5つの質問 山下 淳一郎
成功を収めている企業は、「われわれの事業は何か」を問い、
その問いに対する答えを考え、明確にすることによって
成功がもたらされている。
ピーター・ドラッカー