トップマネジメントのメンバーとなった者は、
それまで担当していた仕事からは完全に手を引かなければならない。
誰かに引き継いでしまわなければならない。
ピーター・ドラッカー
これが、事業が停滞する根本的な原因
名刺に「取締役」と書いてあっても、
経理出身の取締役は毎日エクセルをにらみ、
営業出身の取締役は日々、出張に走り回っています。
なぜ、取締役は取締役として動いてくれないのでしょうか。
取締役になった人は、一つの分野で際立った成果をあげた結果、
経営陣の一員に昇格した人です。
部長クラスまでは部門の成果をあげていればよかったものが、
取締役になると、これまでの仕事の勝手が変わります。
「これまで経験を積んできた分野の仕事」と
「会社全体をマネジメントする仕事」はまったく違います。
ゆえに、取締役になった人も、どう経営の仕事にあたっていいか
わからないのです。かく言う私がそうでした。
ひとたび、取締役という肩書きがついてしまうと、
「できて当然」とされ、教育対象から外されます。
そして、「わかって当然」とされ、意思の疎通は行われません。
その結果、取締役は、社長の意を察することが「取締役の心得」とされ、
社長の意を察して動くことが「取締役の仕事」であるかのようになります。
こうして、取締役のエネルギーは、会社の成長より、
社長の意を察することに向けられていきます。
ドラッカーはこう言っています。
トップの本来の仕事は、昨日に由来する危機を解決することではなく
今日と違う明日をつくり出すことであり、
それゆえに、常に後回ししようと思えば、
できる仕事である。状況の圧力は常に昨日を優先する。
ピーター・ドラッカー
ここで言うトップとは、会社の最上層部のことです。
ところが、多くの取締役は会社の最上層部でありながら、
取締役兼○○部長というように、一つの部門の責任者を兼任しています。
事実、営業の責任者を兼任している取締役は、予算が達成できていなければ、
「今日と違う明日をつくり出すなんて悠長なことを言っている場合じゃないぞ!」
ということになり、まずは、予算達成を最優先に動きます。
まさに、「状況の圧力は常に昨日を優先する」です。
では、どうすればいいのでしょうか。
ドラッカーはこう言っています。
事業部を担当する者は トップマネジメントの仕事を行うには忙しすぎる。
そのためトップマネジメントとしての貢献は何らできない。
トップマネジメントのメンバーとなった者は、
それまで担当していた仕事からは完全に手を引かなければならない。
誰かに引き継いでしまわなければならない。さもなければ、
いつまでたっても現在の仕事から足を洗うことはできない。
ピーター・ドラッカー
「トップマネジメントのメンバーとなった者」とは、
経営陣の一人となった取締役のことです。
取締役兼○○部長は、○○部長としての仕事に忙しく、
取締役の仕事にまで手が回らない、と言うことです。
事業の成長は社長一人で仕切れる限界を越えて成長していきます。
事業は成長すればするほど次から次へと新しい課題を運んできます。
社長一人で会社の将来を想い、社長一人ですべてを検討し、
社長一人ですべての決定を下し、社長一人で組織全体を動かしていく―。
そんな状態を続けてしまえば、会社の経営は疎かになり、
やがて事業は行き詰まってしまいます。
これが、事業の成長が失速する根本的な原因です。
永続的かつ安定的な繁栄のために、
断固たる勇気をもって取締役の部長兼任を解き、
経営チームが経営に専念できる状態を作ってください。
詳しくは、こちらでお読みになれます
ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方|山下 淳一郎
トップマネジメントがチームとして機能するには、いくつかの厳しい条件を満たさなければならない。
チームはシンプルではない。仲のよさで機能させることはできない。好き嫌いは問題ではない。
人間関係に関わりなく、トップマネジメントはチームとして機能しなければならない。
ピーター・ドラッカー