リーダーは、部下に活躍の場をどんどん与え、
部下の仕事ぶりを見守っていくことだ。リーダーの仕事は、
善きもの、価値あるものを強く願い求めようとする
人間の能動性を奮い立たせることだ。
ピーター・ドラッカー
人間の能動性を奮い立たせる
1959年7月6日ドラッカーが来日した時(写真提供:日本経営協会)
1959年7月6日、東京都千代田区にある日本工業倶楽部に、
日本を代表する経営者と経営学者が
ドラッカーの懇談会に集まった。
その場は、東京大学名誉教授の馬場敬治の進行によって進められた。
通訳はアメリカ大使館の豊田英二朗が務めた。
ドラッカーは次のように語った。
あらゆる仕事がチームによって行われるようになる。
たとえ、組織上の役職に上下関係があっても、
仕事においては上も下もなくなる。
知識労働者に必要なのは、貢献意欲と成果をあげる力である。
リーダーの仕事は人を動かすことだ、
などという考えはもってのほかだ。
それは、「人を動かす側」と「人に動かされる側」がいる
という的外れな考えのうえに成り立っているものの言い方だ。
目覚ましい発展を遂げた会社があった。
その発展は、ある2名の幹部によるものだった。
それは誰の目から見ても明らかだった。
その二名が引退すると、その2名がつくり上げた方針と計画は
すっかり忘れ去られてしまった、
実は、管理職者や従業員は、その二名を尊敬していたため、
その方針や計画に抵抗なく従っていただけに過ぎなかった。
2名の幹部がつくり出した方針や計画の内容まで
理解していたわけではなかったのだ。
その会社の管理職者や従業員は、2名の幹部がつくり上げた
方針と計画を自分達の仕事として落とし込むことができなかった。
目覚ましい発展を遂げたその会社は、幹部の入れ替わりとともに、
窮地に追い込まれてしまった。このような結果を生まないためにも、
リーダーは自分たちが考えた方針、計画、目標を通達するだけでなく、
理解してもらう必要がある。
リーダーは、部下に活躍の場をどんどん与え、
部下の仕事ぶりを見守っていくことだ。
リーダーの仕事は、「善きもの、価値あるものを
強く願い求めようとする人間の能動性を奮い立たせること」だ。
ゆえに、知識の詰め込みではなく、正しいものの考え方を
育む取り組みを通じて、部下を育成していかなければならない。
つまり、部下の育成とは、部下を方向づけることだ。
自分が自分がと、自分を第一優先に考えるようでは、
けっして人を育てることはできない。
不器用なリーダーは無害だが機械のようなリーダーは有害だ。
そんなリーダーは誰の協力も得られなくなってしまう。
結局、権力で人を動かそうとするようになる。
指示命令で従わせようとするようになる。
リーダーは「自分が成果をあげて賞賛を浴びる人」ではなく、
「仲間の協力を得て成果をあげ仲間を賞賛する人」だ。
仕事は、人間性の練磨であることを忘れてはならない。
リーダーは、部下がどうすれば力を発揮でき、
最大の成果をあげることができるかに心を砕くことだ。
そのためには、自分の考えを伝えるばかりではなく、
部下の話をよく聞くことだ。一人ひとりが価値ある
挑戦ができる環境をつくりあげていくことだ。
部下の育成と言ってもこちら側の問題だ。
まずは、部下の優れている点を見いだすことだ。
中には人の欠点しか目に映らない人もいる。
しかし、優れている点を探せば必ず優れている点が見つかる。
(『~日本に来たドラッカー 初来日編』より~)
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日本に来たドラッカー 初来日編
著 者 :山下 淳一郎
出版社 同友館 1,800円(税別)
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