一度大きな成功を得ると、他者からの助言を聞き入れることが
できなくなる。そして、課題と正面から向き合うことを避け、
不本意な結果を自ら招いてしまう。
ピーター・ドラッカー
今も多くの企業で起こっていること
写真:日本経営協会 日本で開催されたドラッカーのセミナー 1959年
ドラッカーは、以前、ゼネラルモーターズに、
会社を改革していかなければ経営は破綻する
であろうと注意を促し、3つの提案をしていた。
当時、世界最高の高収益を誇っていたゼネラルモーターズは、
ドラッカーの提案を完全に無視した。しかし、2009年、
日本円にして約17兆円の負債を抱え、経営破綻する。
かつて隆盛を極めたゼネラルモーターズの経営政策は
実効性を失い、部門間の対立やグループ会社間の確執によって
収益はあがらず、主体的に物事を考える従業員はいなくなっていた。
組織の改革は少人数でできるものではない。
その組織で働く全員がその仕事を共有しなければならない。
その倒産劇は、ドラッカーの言った通りの結果であった。
当時のゼネラルモーターズの経営陣にとって、
ドラッカーの言葉は腹立たしいものだったかもしれない。
しかし、ドラッカーは悪意を持って批判したわけではない。
善意あって警報を鳴らしたのだ。ゼネラルモーターズは、
頑なに、「自分たちの正しさ」を疑わなかった。
ドラッカーが言ったことは、「理論的に正しいかどうか」
ではなく「現実にうまくいくかどうか」だった。
ドラッカーが「現実的だった」のに対し、
ゼネラルモーターズは「教条的だった」。
組織の実態を過小評価すれば事業は力を発揮できず、
過大評価すれば事業の成長は望めない。
トップマネジメントの仕事は、組織の実態を客観的に把握し、
誰も注意を払わない問題を取り上げることにある。
時務を知るは名将の活眼。ゼネラルモーターズを
世界最大級の企業へと成長させたスローン亡きあと、
組織全体を見通し、時に応じた、自分のなすべきことがわかるトップは
現れなかったのだろうか。人は、一度大きな成功を得ると、
他者からの助言を聞き入れることができなくなる。
そして、課題と正面から向き合うことを避け、
不本意な結果を自ら招いてしまう。
それが、この時のゼネラルモーターズの姿だった。
今この本を読んでいるあなたの会社はそんなことはない
と思うが、この話は、実際に起こったことであると同時に
今も起こりうることである。そして、今も多くの企業で
起こっていることである。
ドラッカーが提案した3つのことは次のことだ。
1.経営のやり方を変えること
企業は自ら変革していかなければ生き続けることはできない。
今どんなにうまくいっていたとしても、時が経てば今のやり方は、
必ずうまくいかなくなる。
2.事業の大きさに適した運営をすること
事業の規模やその業態に応じて、適切な運営をしていかなければ、
現場の仕事に支障をきたし、組織は不治の機能不全に陥り、
やがて収益をあげることができなくなる。
3.現場に最大限の権限を与えること
組織が大きくなると、一人ひとりが持つ固有の能力は
発揮されにくくなる。リーダーシップは、すべての階層で発揮
されなければならない。現場にできるだけ多くの権限を与え、
現場で働く人が意思を持って判断できる状態で仕事を
させなければ、やがて事業が立ち行かなくなる。
(『日本に来たドラッカー 初来日編』第7話より)
詳しくは、こちら でお読みになれます
ドラッカーのセミナー 経営者の仕事(山下 淳一郎)
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ピーター・ドラッカー
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