トップマネジメントの仕事は、その範囲、必要とされているスキルと気質、
仕事の種類において、一個人の能力を超える。経営書や組織論が何と言おうとも
優れた経営を行っている企業にワンマンはいない。
それらの企業は CEOのチームをもつ。
ピーター・ドラッカー
肩書きの違いはあっても水平的な協働がある
ドラッカーは、『現代の経営』でこんな事例を紹介しています。
「企業の経営の良し悪しを判断する目安を探せ―」
これは、ある銀行が融資の調査部門に出した課題で、
「成長する企業と成長しない企業の違いを見つけ出せ」というものです。
銀行は融資をするかしないかを決めるために、
その企業がこれから伸びるかどうかを見極めなければなりません。
それは銀行にとって重要な課題であると同時に、
難しい課題でもありました。利益があがっているからといって
良い経営を行っているとは限らないからです。
たとえば、新しい商品やサービスの開発に投資をしていなかったり、
優れた人材の採用や人材の育成を行っていなかったり、
人員の数を減らしたりして、出ていくお金を抑えることで
利益を出している状態かもしれないからです。
これは、将来に向けて必要な投資を渋って会社に損害を与えています。
たとえ黒字であったとしても、今日の黒字が
明日の赤字を生むような経営はけっして良いとは言えません。
反対に、今は利益をあげていなくても、
長期にわたって取り組んできた新しい商品やサービスの開発が実り、
大きな成果を得る直前かもしれません。
このように、利益があがっているからといって
必ずしも良い経営とは言えませんし、
利益があがっていないからといって悪い経営とも言い切れません。
収支の数字だけでは経営の良し悪しを一概に判断できないのです。
まさに、経営の良し悪しを判断する目安を見つけ出すことは難題でした。
この調査部は、膨大な数の企業を調べた結果、
一つの目安を発見しました。それは誰もが予想しないものであり、
またどんな経営の本にも書かれていないものでした。
事実、この発見によって、この銀行の融資の成績は
目に見えて良くなっていきました。
それは、調査によって見つけた目安を基準に、
融資するかしないかの判断を行った結果でした。
調査部が見つけた目安とは次のようなものでした。
社長の報酬が他の経営メンバーと
大きな開きがある企業は経営状態がかなり悪く、
逆に、社長の報酬が他の経営メンバーとあまり変わらない企業は
経営チームの仕事ぶりや士気が優れていることが多いー。
これは、報酬の差が「主従関係のもと、主君の指示に従う家来」と
「協力関係のもと、自らの意思で働く同志」の違いを
生んでしまうということです。伸びる会社は経営メンバーに
肩書きの違いはあっても水平的な協働があります。
これは大企業に限らず、成功している中小企業にも
まったく同じことが言えました。
「一人の考えだけで組織を動かしている状態」と
「数人の協力によって組織が動いている状態」、
その違いが企業の成長を決定づけるのです。
詳しくは、こちらでお読みになれます
ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方|山下 淳一郎
トップマネジメントがチームとして機能するには、いくつかの厳しい条件を満たさなければならない。
チームはシンプルではない。仲のよさで機能させることはで
ない。好き嫌いは問題ではない。
人間関係に関わりなく、トップマネジメントはチームとして機能しなければならない。
ピーター・ドラッカー
満員御礼、ありがとうございました。