一流の意思決定者は、きわめてシンプルなルールをもっている。
重要なことで最初から全員の同意を得られる場合には、
あえて決定しないというルールである。
全員が考える時間をもてるよう、決定を先延ばしにする。
ピーター・ドラッカー
生き生きと意志を語れる場があるかどうか
事業の海外展開を試みた2つの会社があった。
都内にある某企業の社長は、経営会議で海外進出の方針を発表した。
事業の海外展開は、社長の頭の中であたためられてきた計画だったが、
発表されたその日に決定を見た。特に、社長の考えに反対する者はいなかった。
社長の言う通りに動くことが無難というの
が長年培われたその会社の文化だった。
海外事業の責任者に任命された役員はすぐに、
その仕事に取り掛かった。ところが2年過ぎても、
具体的な進展はなかった。
海外事業の担当に任命されたその役員は本来、
「事業を進める決定者」だったが、実際に行っていた事は
「関係者に意見を聞いて回るだけの調整役」に過ぎなかった。
「自分の意思で仕事を成し遂げる責任者 」ではなく、
「社長の指示に従う代理人 」だった。
そうさせていたのは社長だった。事業が進むはずはなかった。
すべては数字に反映される。
もう一つの会社はこうだった。経営チームのメンバーの一人が、
経営会議でアメリカに進出することを提案した。チーム内は
積極派と消極派の二つに分かれた。積極派の主張はこうだった。
「既に経済はグローバル化している。海外展開をするかどうか
という議論の余地はない。遅すぎたくらいだ。
すぐにでも進めるべきだ。」
反対派の主張はこうだった。「市場も違う。国の規定もまったく違う。
日本で売れているからと言ってアメリカで売れるとは限らない。
それに日本の市場もフォロー仕切れていない。
アメリカに拠点をつくる前に国内拠点を増やすべきだ。」
その後、決定に至るまで喧々諤々5ヶ月の時間を要した。
しかし、アメリカに拠点をつくったあと、事業は急成長していった。
海外事業を任されたその役員は「意志を持たない調整役」
ではなく「チームを率いて事業を成功させるリーダー」だった。
社長がそう仕向けていた。
社長はその役員が縦横無尽に動けるよう彼に
明確な権限を与えていた。その会社の社長はのちに
こう述懐していた。「あの時、全員が安易に同意していたら、
アメリカの進出は挫折していた。
反対意見があったお陰で、前もって
解決しておくべき課題を見つけ出すことができた。
前者と後者の会社の能力に大きな違いがあるわけではなかった。
では、何が前者と後者の明暗を分けたのか。
ドラッカーはこう言っている。
一流の意思決定者は、きわめてシンプルなルールをもっている。
重要なことで最初から全員の同意を得られる場合には、
あえて決定しないというルールである。
全員が考える時間をもてるよう、決定を先延ばしにする。
ピーター・ドラッカー
意見を戦わせたかどうか、それが前者と後者の明暗を分けた。
誰かが決めたことを実行するより、一緒に考えて決めたことを
実行する方が、実行に対する意欲は高いのは当然だ。
共通の考えに立てば、意見の対立から連帯感と責任感を
生み出すことができる。
前者の会社は、社長の意のままに動く人間がいるだけだった。
それに対して、後者の会社は、関係者全員に
連帯感と責任感をもたらした。優秀な人が何人いても、
「頼まれればやる」という受け身の人間ばかりでは
何も成し遂げられない。
何も達成しようとしていない人は話が前に進まない。
「誰かがこうするべきだ」と組織の内部事情を語るだけだ。
何かを達成しようとしている人は話が前に進む。
「私はこうしたい」と生き生きと自分の意志を語る
意見をぶつけ合ってこそ、お互いの成功がある。
詳しくは、こちらでお読みになれます
ドラッカー5つの質問 山下 淳一郎
成功を収めている企業は、「われわれの事業は何か」を問い、
その問いに対する答えを考え、明確にすることによって
成功がもたらされている。
ピーター・ドラッカー
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ピーター・ドラッカー
今以上に事業を伸ばしていくためには基本と原則は不可欠です。
さらなる発展のために、ドラッカーを学びましょう。