草創期の企業は一人の人間の延長である。
しかし、一人のトップマネジメントから
トップマネジメントチームへの移行がなければ、
企業は成長どころか存続もできない。
成功している企業のトップの仕事は、
チームで行われている。
ピーター・ドラッカー
ドラッカーが教える永続する組織とは
今日の姿では生き延びられない
ドラッカーは40年以上、企業をはじめ
多くの非営利組織など、様々な組織の現場に入り、
成果をあげる経営者と成長している組織を研究した。
組織が永続する厳しさについて、
ドラッカーはこう言っている。
確信を持って言えることは、ビジネス、教育、医療その他いかなる分野であれ、
今日リーダーの地位にある組織の多くが、これの30年を生き延びられずから、
少なくとも今日の姿では生き延びられないということである。
ピーター・ドラッカー
あなたが今いる会社は30年後はないということだ。
一方、30年以上組織を永続させ、事業をさらに
拡大してきた組織は実在する。
組織を永続させるために押さえておくべきことは何だろうか。
事業は今の姿ではいつか立ち行かなくなる
組織は人の集まりだ。そこに人が集まるからには
共通目的がある。企業ではそれを経営理念と呼ぶ。
経営理念は会社の原点であり、
創業者の想いだ。簡単に変わらない。
しかし、事業は社会、市場、顧客に
向けられたものであるため、
社会、市場、顧客に変化が起これば、
組織は自らを変えていかざるを得ない。
馬車が移動手段であった1800年代は
馬具の部品のニーズがあった。
1837年、馬具の部品をつくるメーカーが誕生した。
そのメーカーは革と金具を扱うことに強みを持っていた。
1970年代になると自動車が普及し、
馬車は移動手段として利用されなくなった。
社会、市場、顧客はすっかり変わり、
馬具の部品のニーズは激減し、
馬具の部品をつくる事業は成り立たなくなった。
変革できる組織こそが永続する
馬具のメーカーはその後、革と金具を扱う強みを生かして、
ハンドバックや財布などをつくり、絶命の危機を機会に変え、
大きな成功を収め繁栄した。1920年後半には、
腕時計やアクセサリー、香水もつくるようになった。
その会社はエルメス。
あらゆる生命が、環境の変化に対して
自ら多様性を創生しながら
生き残れるように工夫している。
永続する組織とは、変革できる組織である。
成功した企業が行ってきたこと
ほとんどの事業が一人の想いからはじまる。
その人に共感する人が一人増え、二人となり、
やがて大きな組織となっていく。
組織とはいえ、一人ひとりの集まりである。
人は誰でも年を取り、やがて人生を全うする。
事業として成功し、その後成長を続け、
存続するために、具体的にどうすればいいのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
草創期の企業は一人の人間の延長である。
しかし、一人のトップマネジメントから
トップマネジメントチームへの移行がなければ、
企業は成長どころか存続もできない。
成功している企業のトップの仕事は、チームで行われている。
ピーター・ドラッカー
このドラッカーの言葉を、そのまま
体現したかのような企業がある。
あなたも知る、ある企業だ。
(1)トップ一人の限界を超える体制がある
トップの仕事は「組織を通じて成果をあげること」だ。
どんなに会社に忠誠を尽くす社員が何人いても、
人間が仕事をするからには人間の組織化だ。
さらに、商品やサービスがどんなに優れていても、
組織は異なる仕事の連立で成り立つものである以上、
組織の運営は必須である。
トップは日々の問題解決に追われ、
気がつくと雑事雑務をこなす
マルチプレイヤーになってしまう。
マネジメントの仕事はあまりに多く、あまりに複雑で、
トップ一人で仕切ることはできない。
経営チームがあれば、
誰とも分かち合えないことをほかのメンバーと
分かち合うことができ、トップ一人の限界を超え、
事業の成長が運んでくる重荷に耐えられるようになる。
永続する組織はこうして、
トップ一人の限界を超える体制をつくっている。
(2)危機を未然に回避している
トップの仕事は「意思決定で成果をあげること」だ。
私たちは、一つの正解が用意された問題集を解くという
学習によって培われた習慣から「物事には一つの正解がある」
と思い込んでいる。
しかし、経営に正解はない。
あるのは経営者の意思だけだ。だから「意思決定」という。
トップは何か一つのことを決めるにあたって、
複雑な事情が絡み合う中で決定を下さなければならない。
物事には死角があり、一人の人間が
認識できる範囲には限界がある。
一人の限られた視界だけを頼りに
意思決定するのは極めて危険だ。
ひとたび意思決定を間違えてしまえば、
会社を思いも寄らない方向へ導いてしまうからだ。
経営チームをつくることによって、
自分の考えに対して客観的なフィードバックを得ることができ、
より適切な意思決定を導き出せるようになる。
永続する組織はこうして、危機を未然に回避している。
(3)次の時代を後進に託している
トップの仕事は「会社の将来をつくること」だ。
会社はトップの考えに基づいて動いている。
かといって、物事を決めてもらうことに
慣れた人間だけしかいない会社に将来はない。
会社には、自分で考え、自分で決め、
自分で行動を起こせる人間が必要だ。
一方、これまでの成功を築いてきた年長者は、
豊富な経験があると同時に、過去の成功に固執しがちだ。
これからの成功を邪魔するのは、常に過去の成功体験だ。
将来、組織が遭遇する課題はこれまでと違う種類のものだ。
必要なのは「現在の業務に慣れた家臣」ではなく、
「将来を切り拓く同志」なのだ。
事実、同じ汗をかかなければ
わからないことがたくさんある。
新旧混合の経営チームをつくれば、
後進はトップがどんな想いでどのように
成功を築いてきたかを理解することができる。
世代バランスのとれた経営チームをつくれば、
後進は次の時代を切り拓く同志に育つ。
永続する組織はこうして、
次の時代を後進に託している。
(4)後継を育成している
トップの仕事は「事業を継承すること」だ。
誰かに引き継ぐタイミングが来たときに
引き継ぎを始めてもうまくいかない。
経営の継承は短期間でできないからだ。
ドラッカーは、やり直しのきかない最も難しい仕事が
トップの継承だと言っている。
一人の人間に引き継いだあとになって
選任ミスだとわかっても、
簡単に交代させることはできない。
3人の経営チームをつくれば、
3人が3人とも一度に交代することはない。
3人のうち1人を入れ替えることは可能である。
あとになって選任ミスだとわかっても、
他の2人がそれを改め正すことができる。
経営チームをつくれば取り返しのつかない問題に至らず、
危険な交代を安全な入れ替えで済ませられる。
永続する組織は、必ず後継者の育成している。
事業を成功させ、組織を永続させることはできる
事業を成功させ、組織を永続させるために、
次の4つのことをお勧めしたい。
一、信頼できる幹部を4人選出し経営チームをつくる。
二、組織の存在価値を問いただし、ミッションを再定義する。
三、組織の強みを明らかにし、事業を変革する。
四、変革を起こせる人材を育成すること。
最後にドラッカーの言葉を紹介して終わりたい。
Change or Die
(変革なくば死すべし)