追従や立ち回りのうまい者が昇進するのであれば、
組織そのものが業績の上がらない追従の世界となる。
公正な人事のために全力を尽くさないトップマネジメントは、
業績を損なうリスクを冒すだけはない組織そのものへの敬意を損なう。
ピーター・ドラッカー
社員を間 違った方向づけをしない努力
ドラッカーはこんな事例を紹介しています。
ある化学メーカーは、新製品を開発するため
事業部に長期的な取り組みの指示を出しま した。
数年過ぎても新製品は出てきませんでした。
事業部長は経営陣に対して、その製品 は時期尚早だと主張し続け、
新製品の開発に手をつけなかったのです。
そして、新製品を 出した競合他社に先を越されてしまいました。
経営陣の厳しい追及に対して、事業部長はこんな本音をもらしました。
「新製品の開発が会社にとって重要なのはわかっています。
しかし、うちの会社のボーナ スはその年の業績で決まりますよね。
もし新製品の開発をスタートすれば、
私の部下は、そ の年のボーナスが減ることになります。
私は自分の部下に今年のボーナスをあきらめろ、と 言えなかったのです」
これが、報酬制度による社員の働きを間違った方向に差し向けてしまう典型的な例です。
社員に間違った方向づけをしない努力 自動的に間違った方向づけをなくすことはできません。
また、方向づけをなくす機械的 な方法もありません。
「間違った方向づけ」を丹念に探し出し、「間違った方向づけをなく す努力」を
地道に行っていく以外にありません。
上司と部下で膝詰めの擦り合わせを行って いくしかありません。
立てた目標を実現するため、「社員を正しく方向づけする努力」だけでなく、
「社員を間 違った方向づけをしない努力」を経営チームの仕事の中に組み込んでください。