経営者の使命とは
1945年、「人間を幸せにする社会」を
どれだけ多くの人が願ったことでしょうか。
その願いの強さは、それを心に宿した人しか、
きっとわからないに違いありません。
しかし、わたしたち一人ひとりは、
その願いを引き継ぐ責任を持っています。
あらゆる力は、人間が幸せになるためだけに
使われるものでなければなりません。
人は心に恐怖が充満したとき、
何者かが人の心を内面から折ってしまうからです。
わたしたち一人ひとりは社会の中で生きています。
とはいえ、わたしたち一人ひとりは社会の一部ではありません。
一人ひとりがかけがえのない固有の存在です。
わたしたちは、生きる場を持ち、生きる糧を得ながらも、
生きるためには生きる糧以外の何かを求めて生きています。
人は、何かを共有し、何かを分かち合い、
生きる糧以外の何かを感じながら過ごしています。
わたしたちは、こうして内面の豊かさの中で生きています。
ドラッカーはこう言っています。
一人ひとりの人間が、社会的な位置づけと役割を
与えられなければ社会は成立せず、
大量の分子が目的も目標もなく飛び回るばかりとなる。
他方、権力に正統性がなければ、絆としての社会が存立しえない。
ピーター・ドラッカー
ドラッカーが追求したものは、
「どうすれば人間を幸せにする社会をつくれるか」です。
社会的な位置づけと役割とは、社会的立場や役職を
意味するものではなく、「自分は何のために生きるのか」
ということです。
世界を構成する一つ一つの国々が、
各国にある一つ一つの組織が、そして、組織を形づくる一人ひとりが、
一人の人間を大切にすることによって、
「人間を幸せにする社会」がつくられていきます。
わたしたち一人ひとりの内面的成長は、
組織全体に良い影響をもたらし、
やがて人間を大切にする大きな力となって、
人間を幸せにする社会をつくり出していくことができます。
それが、マネジメントです。
社会を変えるその一人とは一体誰か。そうです、
その一人とは、「わたしたちの一人であるあなた」であり、
「わたしたちの一人であるわたし」です。