組織は、もはや権力によっては成立しない。信頼によって成立する。
信頼とは好き嫌いではない。信じ合うことである。
そのためには、互いを理解していなければならない。
互いの関係について互いに責任を持たなければならない。
それは義務である。
ピータードラッカー
お互いの間に「話し合い」がないから
ある企業での話でこんなことがありました。その企業は、組織を改革しようと、組織をチームで編成し、各チームごとに成果に見合った報酬を与えるようにしました。経営陣はこれで、従業員は目の色を変えて働いてくれるだろう、と考えました。打った対策は、成長している他の企業で成功しているものなのに、その企業では、従業員の動き方は、これまでとまったく変わりませんでした。いったい何が問題なのでしょうか。
調べてみると、従業員が上司や経営陣を信頼しているかどうか。経営陣が従業員を信頼しているかどうか。この信頼感が保たれている企業においては、様々な対策が効果を上げているのに対し、信頼感のない企業は、どんなに有効な方法を導入しても、効果がないことがわかりました。どんないい方法を取り入れても、従業員は内心、『どうせ、今度の制度もオレ達をうまく動かそうとしているだけだろう・・・』、『何かまた裏があるに違いないぜ・・・』という状態であっては、従業員の動き方が良くなるはずがありません。打った対策が効果がないのは、「信頼感」がないからです。社長は、社員のことを真剣に考え、働き甲斐のある良い会社にしたいと考えているのに、社員に聞いてみると、『うちの社長は社員のことを考えてくれていない』、『うちの社長は売上げのことしか頭にない』と感じていること多々あります。お互いの間にあるのは、「不信感」です。
不信を生んでしまう根本的な問題は何でしょうか?。それは、お互いの間に「話し合い」がないからなのです。お互いにあるのは報告と連絡だけ。つまり、一方通行になっているのです。組織内部の摩擦のほとんどが、お互いに「話し合い」があれば発生しなかったものです。お互いにただ思い込んでいるだけです。思い込みではいけないのです。何事も勝手に決めつけてはいけません。報告を待っているようではいけません。自ら出ていって、「話し合い」の機会を持つのです。これは、あらゆる階層、あらゆる場面について言えることです。経営陣同士の「話し合い」、上司部下との「話し合い」、顧客との「話し合い」、取引先との「話し合い」。あらゆるところに、「話し合い」が必要なのです。
たとえば、「私は、これについて、こう考え、このようにしたいと思っているが、あなたはどう思いますか?」、「あなたは、私に対して、どのような支援を望みますか?」、「私が、あなたの仕事の力になることはないですか?、逆にあなたの仕事に迷惑をかけていることはないですか?」。というようなことについて、同僚、上司、部下との間、部門間などで「話し合う」ことによって、社内の不信感や摩擦が見る見るうちになくなっていくことを実感されるはずです。このような「話し合い」は何よりも、相互信頼関係をもたらします。そのような状態になってこそ、組織が有効に動くようになり、こうしてはじめて様々な対策が生きてくるのです。