これまで仕事をしてきた分野で培った知識と経験が、経営者の仕事の妨げになる。
経営者になっても、会社全体に立った視点を持てないままでいる。
売上だけを追いかけ、トップが明確な将来像を描かなかいところに失敗が生まれる。
ピーター・ドラッカー
ビジョンの欠如は働く人の士気を破壊する
写真:日本経営協会 日本で開催されたドラッカーのセミナー 1959年
ドラッカーはかつて、アメリカの大手自動車メーカーである
ゼネラルモーターズにコンサルティングとして深く関わっていました。
ドラッカーは来日した時のセミナー第1日目で同社で実際にあったことを
語りました。ここではその内容をほんの一部紹介いたします。
―ここから―
ドラッカーは一人ひとりに語りかけるように、こう言った。
ゼネラルモーターズの例を紹介したい。前任の社長は
アルフレッド・スローンという人で、ゼネラルモーターズを
飛躍的に大発展させた功労者だ。経営陣の一人に、
ハーロー・カーティスという男がいた。
アルフレッド・スローンは自分の後任に、彼を社長に選んだ。
もちろん今後の政策を十分に考え抜いたうえでのことだった。
カーティスが社長になってから、会社は窮地に
追い込まれてしまった。カーティスはけっして
経験の足りない人物ではなかった。大不況の中、
ある事業部の責任者として奮闘し、その事業部を最も
利益率の高い組織に変えた実力者だった。
一番売りにくい高級車を全米三位にした優秀な人間だった。
その彼が会社を絶体絶命の窮地に追い込んでしまったのである。
いったいどうしてか。カーティスは、経営を進めるにあたって、
他の役員の協力を得ることをよしとしなかった。
トップマネジメントは一人で行うものであるという考えから
脱することができず、トップマネジメントを自分一人で仕切った。
事実、カーティスは社長に就任しても、車をどう売るかしか
考えなかった。社長になってもなお、営業マンとしての考えしか
持たず、営業マンとしての仕事しかしなかった。
こうして、カーティスは会社の窮地を自らつくってしまった。
対外的に会長職に昇進した形をとったあと、すぐに会社を去った。
なぜ優れた人が優れた経営を行うことができなかったのか。
この時、ゼネラルモーターズに必要だったのは、前任の社長が
過去に考えた政策は、いまになっても適切な政策かどうかを
検証することができる人物だった。そして、トップマネジメントを
一人で仕切るのではなく、他の役員の意欲を湧き立たせ、
役員を会社の発展に向けて教え導くことだった。
カーティスは、この時のゼネラルモーターズに必要だったものを
持ち合わせていなかったのだ。いや、カーティスは、
仕事の勝手が変わったことを受け入れなかったのだ。
一つの部門で仕事をしてきた責任者は、経営者に必要な知識と
訓練に欠いている。これまで仕事をしてきた分野で培った知識と経験が、
経営者の仕事の妨げになる。経営者として任命を受けたとしても、
会社全体に立った視点を持てないままでいる。
会社全体に立った視点を持てないことが、経営者の仕事の妨げになる。
売上だけを追いかけ、トップが明確な将来像を描かなかったところに、
その失敗があった。ビジョンの欠如は働く人の士気を破壊する。
トップが価値あるビジョンを示せば、働く人は力を発揮してくれる。
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(『日本に来たドラッカー 初来日編』第4話より)
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ドラッカーのセミナー 経営者の仕事(山下 淳一郎)
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ピーター・ドラッカー
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