日本は他の国にない計り知れない力を秘めている。
日本人は、物事を巧みに行い、物事を成し遂げる力がある。
ピーター・ドラッカー
日本が持つ底力
写真:日本経営協会 日光での記念撮影 1959年
「ドラッカーからの手紙」の続きを紹介いたします。
ただのコンサルタントではないドラッカーの一面を
お感じになられることと思います。
―ここから―
一方、残念でならなかったこともあった。
職人の手作りで生み出されたデザインと商業用につくられた
製品のデザインに大きなギャップを感じた。地方は美しいのに、
都市の姿はよくないことが残念でならなかった。
街並みはどうしてここまでまとまりがないのかと残念だった。
日本の農村が美しかっただけに京阪、阪神のエリアは、
残念に思えた。東京がシカゴよりいいとか、
ロサンゼルスが大阪より悪いというのではない。
日本は農村地方であれだけ美的概念を生かしているのに、
なぜ都市は醜いのだろうかと考えさせられた。
バスや電車のデザイン、靴や家具、オフィスやビルなどは、
アメリカのデザインが機械的に取り入れられているだけで、
ただ製造した、ただ生産したという印象しか持てなかった。
美しさを表現する日本の技術が生かされていないのが
残念でならなかった。
日本は、優れた能力がありながら、
それを放棄していることが残念だった。
都心は、平らな土地が必要だが日本は土地が狭い。
したがって、縦の空間を生かしていかなくてはならない。
それは入り交じったいろいろなものを
一つの空間としてどう生かすかといった課題だ。
食器類は、たとえ量産品であってすべて美しいデザインだった。
しかし、商業製品となると、優れた日本の技術を応用する努力が
忘れられていた。バス、鉄道、靴、家具、オフィス、ビルなとは、
ただ洋式のものが取り入れられているだけで、
他の国とは違う日本だけが持つ良さが生かされていない。
自国の文化が自国に生かされていないのは日本だけかもしれない。
私は、帰国して早々、アメリカの建築家と会った。
シアトルの空港でその彼と待ち合わせをした。
彼は、日本の建築のデザインに関する本を5冊も持っていた。
彼は、海外で建設している建物の設計を新しいデザインに
するために、日本のデザインを学んでいた。
現在、アメリカでは、他の国のものを自分の国に
取り入れていくことは、当たり前になっている。
例外もあった。工場で見た設備のデザインは、
日本的デザインを基調とされたものだったし、
新型のラジオやカメラも、日本らしいデザインだった。
奈良の宿屋のゆったりした開放的なつくりには感銘を受けた。
アメリカ式のホテルの形式と日本古来のデザインの技術と
現在の世界の仕事に結び付けていく良い兆候だと思えた。
日本は他の国にない計り知れない力を秘めている。
新しいものをはじめてつくり出す力、
すでにあるものをもっと素晴らしいものにしてしまう力、
他の国が築き上げてきたものを自国のものにしてしまう力だ。
日本人は、物事を巧みに行い、物事を成し遂げる力がある。
空間を美しく生かしていくデザインの創出に、
日本が持つ底力を発揮するチャンスがある。
(『日本に来たドラッカー 初来日編』第7話より)
詳しくは、こちら でお読みになれます
日本に来たドラッカー 初来日編 (山下 淳一郎)
この世にあって何がしかの責任を担う者であるならば、
ドラッカーとは、いま読むべきものである。明日読むべきものである。
10年後、50年後、100年後にも読むべきものである。
ジム・コリンズ
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ピーター・ドラッカー
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