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ドラッカーの名言

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ヒトラーに異を唱えたドラッカー

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ファシズム全体主義の脅威に対抗するための唯一の方策は、
われわれ自身の社会に新しい基本的な力を呼び起こすことである。
もちろん、そのような力は簡単に呼び起こせるものではない。
新しい秩序を簡単に生み出す方法はない。

ピーター・ドラッカー

 

われわれの社会に生まれた力

 

経済人の終わり0303.jpg

1929年、史上最大の不況が世界を襲った。
ドイツは600万人の人が仕事を失い、生活はどん底に突き落とされた。
人々は、この経済危機を解決してくれる強いリーダーを待ち望んだ。
そこに現れたのが、ヒトラーだった。ヒトラーは
人々にとって経済危機を解決してくれるリーダーに見えた。
聴衆を奮い立たせるようなヒトラーの演説は、多くの人を魅了した。

 

その頃、ドラッカーはフランクフルトにいた。
新聞社で記者として働いていた彼は、22歳から23歳の時、
ヒトラーに何度もインタビューをした。
ヒトラーの秘めた狂気にいち早く気づいたドラッカーは、
政府関係者やマスコミ関係者に会うたびに、
起こるであろう危険を訴えた。

 

政府もマスコミもヒトラーを甘く見ていた。
人々は、彼の演説に熱狂した。
社会に対する不安が人々の熱狂を駆り立てた。
「みんながそう言っているからそうだろう」
「みんなが大丈夫と言っているから大丈夫」
という考えは恐ろしい。
時として道を誤り、時には道を失う。

 

大勢の人々が「それもありだ」と言っている時に、
自分一人が「それは違う」と言うのはかなりの勇気が必要だ。
しかし、それが私利私欲のためでなく、
世のため人のためという考えに基づくものであれば、
その主張を貫くべきだ。

 

1933年、ドラッカーはヒトラーに対抗する書物を書いた。
身の危険を顧みず、正面からナチスに反対する意思を示した。
1934年、ヒトラーは最高権力を握る職に就いてしまった。
ドラッカーの言っていたことが、現実のものとなってしまった。

 

ヒトラーは、「経済危機を解決してくれるリーダー」ではなく、
「人間の幸福を脅かす暴君」だと、人々が気づいたときは遅かった。
ヒトラーの意に反する者は、投獄され、処刑された。
ドラッカーが書いた書物は、ナチスによって回収され、
焼き捨てられた。ナチスに対抗する意思を示したドラッカーに、
ナチスの追手が迫ることは明らかだった。

 

「人の考えを無視して強制的に一つの考えにまとめること」
をファシズムと言う。そして、「人の命より
国の主張を優先する思想」を全体主義と呼ぶ。
ドイツのナチスは、まさにそれだった。
戦前、戦中の日本も全体主義だった。

 

飢えと失業に対する不安がナチスの台頭を許し、
社会に対する失望が全体主義を生んでしまった。
人々は、「まともな暮らしができるなら、
どんな社会になってもいい。」という考えになった。

 

社会は、人間の豊かな精神があってはじめて成り立つ。
社会の発展といっても、それは、人間の絆が生み出す活力の
結果だからだ。社会は既に崩壊していた。崩れ去ったものに変わる
新しい力を必要としていた。ドラッカーはこう言った。

 

ファシズム全体主義の脅威に対抗するための唯一の方策は、
われわれ自身の社会に新しい基本的な力を呼び起こすことである。
もちろん、そのような力は簡単に呼び起こせるものではない。
新しい秩序を簡単に生み出す方法はない。
ピーター・ドラッカー

 

 

当時28歳のドラッカーは、これからの社会に生まれるであろう
新しい力を探求していた。全体主義は、「私は全体主義です。
だから、気を付けてください」と言って現れない。
はじめは何が何だかわけがわからない。
しかし、気がついた時にはもう遅い。
なんとも扱いにくい魔物である。

 

ナチスの横暴が進んでいくのをじっと見ていた人は、
過去を思い返し、次のように言った。
ナチスが他の党員を攻撃した時、自分はその党の
人間ではなかったので気にしなかった。
ナチスが
新聞社を襲った時も、不安な気持ちになったが、
抵抗しなかった。ナチスはある人種の絶滅を主張したが、
自分はドイツ人なので、何もしなかった。そしてナチスは
教会を攻撃した。自分は教会の人間だったので、
そこではじめて抵抗した。しかし、その時は手遅れだった。」


大変なことが起こっていることはわかりつつも、
火の粉が、直接、自分に降りかかるまでは、実感が持てないものだ。
それが大きくなる前に、起こっていることの本質を
見抜かなければならない。全体主義は、一人ひとりの英知が
啓発されることによってのみ防ぐことができる。
では、その英知とはいったいなんだろうか。

続く(「頭の良さ」ではなく「善き志」

 

日本に来たドラッカー-初来日140.jpg
詳しくは、こちら でお読みになれます

日本に来たドラッカー 初来日編 (山下 淳一郎)

ドラッカーとは、いま読むべきものである。明日読むべきものである。
10年後、50年後、100年後にも読むべきものである。
ジム・コリンズ

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